更新 設備のこと
これまで、お風呂やトイレには当たり前のように窓がありました。しかし最近は、お風呂やトイレに窓をつけない方が増えています。
現在、昔に比べて家の気密性が重要視されています。また、24時間換気システムが義務化され、窓を開けずに換気できるようになっています。このような変化の中で、窓のあり方も変わっているのです。
本稿では、窓なしのお風呂やトイレの長所と短所をご紹介します。新築の間取りをご検討中の方は、いま一度、お風呂やトイレの窓の必要性を検討してみませんか。
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さっそく、窓なしのお風呂やトイレのメリット・デメリットをご紹介します。じつは、意外と「窓なし」はメリットが多いので、驚かれるかもしれません。
まずは、気になるデメリットからご紹介しましょう。
・自然光が入ってこなくなる
・開放感がなくなる
・窓枠を棚代わりに使えなくなる
順番に、詳しく解説します。
窓がないと、自然光が入ってきません。ですから、たとえば真夏の昼間にシャワーを浴びたいとき、浴室の照明をつける必要があります。
窓なしのトイレも、昼間から照明をつけねばなりません。停電時に備えて、懐中電灯を常備しておいたほうがよいでしょう。
・窓がないと自然光が入らず、昼間でも照明が必要になる
・停電時に備えて、懐中電灯等を置いておく必要がある
なお、自然光(太陽光)と人工光(照明など)はスペクトルが違います。プリズムで分光すると、蛍光灯は主に「光の3原色」と言われる赤・緑・青に分かれます。
一方、自然光は虹色のグラデーションが映し出されます。階調豊かで、かつ光の様子が刻一刻と変化しますので、その風情から「自然光が好き」と感じる方が少なくありません。
お風呂やトイレで自然光の明るさや趣(おもむき)を感じたい方は、窓があるほうがよいでしょう。
浴室の窓からすてきな景色が見渡せたら、入浴がワンランクアップしそうですよね。そんな開放的な景色が見えるお風呂なら、窓なしにするのはモッタイナイかもしれません。
トイレのような狭い空間では、窓がないと圧迫感を感じる場合もあります。閉所が苦手な方は、窓があるトイレのほうが安心できるでしょう。
意外と物を置くのに便利なのが、窓枠です。芳香剤や観葉植物、インテリア雑貨などを置くのにちょうどいいスペースですよね。
「自然光や開放感、窓枠が欲しい。でも、外からの視線は遮りたい」という方は、型板ガラス(不透明のガラス)の窓をつけるといいでしょう。
景色は見えませんが、採光量や圧迫感の軽減効果は、透明ガラスの窓と大きく違いません。
つづいて、お風呂やトイレを「窓なし」にするメリットをご紹介します。
・換気量が安定する
・窓の掃除が不要になる
・防犯上の心配が減る
・熱の流出入が抑えられる
・建築コストが下がる
順番に、詳しく解説します。
なお、実例が掲載されているカタログもございます。ご興味がある方は、以下からご請求ください。
窓があるほうが換気しやすそうに感じますが、意外とそうでもありません。窓を使った自然の力(風力や温度差)による換気は、換気量が安定しないのです。
窓で有効な換気をおこなうには、以下が必要です。
・空気の出入り口を2箇所以上つくる
・できれば対角線上の窓を開ける
・風が弱いときは長めに開ける
狭く密閉性が高いお風呂やトイレでは、やや難しい条件です。換気扇による機械換気(強制排気)のほうが、実用的でしょう。
ただし、機械換気は窓が開いているとうまく機能しません。たとえば、ユニットバスの説明書を見ると、入浴後に換気を実施するときは窓やドアを閉めるよう促しているものがあります。
換気目的で窓が欲しいと感じているのであれば、換気扇で代替可能です。とくに、窓を一箇所しかつけられないお風呂やトイレは、窓より換気扇のほうが役に立ちます。
なお現在、24時間換気システムの導入が義務化(建築基準法施行令 第20条の8)されています。このシステムのうち「3種換気」は、室内が負圧になります。
室内が負圧の状態になると、窓を開けたときそこから外気を吸い込み、ホコリ・花粉・黄砂などが侵入します。これらが苦手な方は、窓ではなく換気扇で換気していただくほうがよいでしょう。
一方、1種換気であれば負圧になる心配がありません。お部屋の熱を捨てずに済む「熱交換換気」もできます。弊社でも、省エネの観点から1種換気を採用しています。
・1種換気:機械吸気・機械排気、熱交換換気ができる
・2種換気:機械吸気・自然排気、クリーンルームに向いている
・3種換気:自然吸気・機械排気、一般住宅で多く採用されている
ちなみに、換気扇の電気代は1日つけっぱなしにしても「数十円/月」ほどです (予備暖房機能や乾燥機能がある風呂用換気扇は「300~500円/月」程度)。
電気代については、あまり気にしていただかなくてもよいでしょう。
窓がなくなると「窓枠、ガラス、サッシのレール」などがなくなりますので、掃除がラクになります。
ガラスやサッシに発生しがちな結露もなくなりますので、水滴を拭き取る作業も要りません。窓まわりのコーキングにカビが生えることもありませんので、カビ取りも不要です。
お風呂やトイレに入るとき、のぞかれていないか不安になりますよね。窓がなければその心配は不要です。プライバシーを完全に確保できます。
お風呂やトイレが敷地の奥まったところにある場合、換気のために窓を開けておくと、空き巣等に侵入される危険性もあります。窓がなければ、その心配もなくなります。
熱には、高いほうから低いほうへ移る性質があります。ですから、夏や冬には以下の減少が起こります。
・夏は、外から室内に熱が流入する
・冬は、室内から外に熱が流出する
住宅における熱の流出入は「屋根・外壁・床・開口部 (窓やドア)・換気」で発生します。この熱の流出入をできるだけ減らそうとするのが「断熱」です。
じつは、窓は熱の流出入が一番多い場所です。ですから、窓をなくせば相当に熱のロスが減ります。
窓のない浴室やトイレは、適温に保ちやすくなります。ですから、冬に「寒い……」と感じていたのが緩和されるでしょう。
光熱費の軽減も期待できます。お風呂では、ヒートショック対策にもなります。
窓を増やせば、その分のコストがかかります。反対に、窓を減らせばコストが下がります。
窓をひとつなくすと、見積額が数万円下がるケースもあります。とくに、防火地域や準防火地域で建築する住宅の場合、防火対策窓は高額ですので、この効果が大きいでしょう。
「住宅は、採光や換気のために窓が必要」と聞いたことがないでしょうか。もしそうなら、風呂やトイレの「窓なし」は法令的に大丈夫なのでしょうか?
結論から言うと、問題ありません。メリットとデメリットを考慮して、窓ありにするか窓なしにするか、自由に選んでいただいて結構です。
ちなみに「建築基準法 第28条」で、居室には採光や換気に必要な窓を設けなければならない(必要面積は以下参照)とされています。居室とは、住宅では「居間、寝室、台所」が該当します。
・採光に必要な窓の面積:床面積の1/7以上
・換気に必要な窓の面積:床面積の1/20以上
一方、浴室や洗面脱衣室、トイレなどは「居室」に当たりません。ですから、上述の窓の規定に該当しません。
ただし、トイレは「建築基準法施行令 第28条」に以下の規定があります。
便所には、採光及び換気のため直接外気に接する窓を設けなければならない。ただし、水洗便所で、これに代わる設備をした場合においては、この限りでない。
トイレは、窓が必要です。しかし、水洗便所で、照明器具や換気扇があれば窓がなくてもよいことになっています。
「窓なし」のお風呂やトイレには、意外と実用的なメリットがたくさんあります。これまでの観念にとらわれず、窓をつけるかどうか、柔軟に考えてみてはいかがでしょうか。
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