更新 間取りのこと
本稿では、間取りにヌックを取り入れる方法をご紹介します。新築住宅の間取りをご検討中の方や、おうち時間の増加にともないヌックが気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。
これまでLDK等の「家族の共有スペース」は、開放感に主眼を置いて設計されてきました。しかし、家族で過ごす時間が増えると、共有空間の役割にアップデートを求める動きが出てきました。
そのひとつが「開放」とは真逆の「こもれる」機能を持つヌックです。じつは古くて新しいヌックは今、注目されるべくして注目されています。あなたも、マイホームに取り入れてみませんか?
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さっそく、間取りにヌックを取り入れるアイデアの中から、人気の方法を4つご紹介します。
LDKは家族が一緒に過ごす場所であり、家の中でもっともパブリックな居室です。そんなLDKにはプライベートな要素がありませんが、ヌックを設けることで「仮の専有スペース」がつくれます。
LDKのヌックで過ごすと、同じ空間にいる家族とほどよい距離感が保てます。家族でLDKをシェアしているような感覚で過ごせ、それぞれがプライベートな時間を楽しめるでしょう。
LDKとヌックはゆるやかに区切り、空間にメリハリをつけるとよいでしょう。LDKに隣接した小上がりの和室を想像していただくと、分かりやすいかもしれません。
家の中で、デッドスペースになりやすく活用方法に困るのが、階段下です。選択肢の定番は収納やトイレですが、ここに「ヌック」を加わえると一気に可能性が広がります。
たとえば、リビング階段とヌックはバツグンの好相性です。読書スペースにしたりミニワークスペースにしたり、あるいはペット用のお部屋にしたり、工夫しだいでさまざまな使い方ができます。
ただし、階段下は勾配天井になり、低いほうがやや窮屈になります。立面図等の「高さが分かる図面」でしっかり完成形を想像しながら、設計を進めましょう。
ヌックを間取りに取り入れたい方の中には、窓ヌックを見て憧れた方が少なくないかもしれませんね。
窓のそばにヌックを設けると景色を眺めたり、ひなたぼっこを楽しんだりしてゆっくり過ごせます。読書にも、丁度いいスペースになるでしょう。
ちなみに、出窓をヌックにすると、要件を満たせば床面積に算入されません。建ぺい率や容積率をいじめずに済む空間ですので、狭い敷地で重宝します。
ヌックは隠れ家のような趣があり、子どもの好奇心をかき立てる場所です。オモチャのテントでずっと過ごす子どもを、ご覧になったことはありますか?あのような感じで、ヌックは絶好の遊び場になります。
ヌックと隣接するスペースは、ハッキリ境界が分かるようにしましょう。ヌックはオモチャを散らかしていい場所、隣にオモチャは持ち込まない、などのルールを子どもと取り決めやすくなります。
キッズスペース・ヌックをつくるなら、子どもが成長したあとどのように転用するのか、はじめから計画しておきましょう。
間取りにヌックを取り入れるアイデアの中から、人気の方法を4つご紹介しました。
さて、そもそも「ヌック」とはどういう空間を指す言葉なのでしょうか。ここからは、ヌックのことをもう少し深く掘り下げていきましょう。
ヌックの由来は、スコットランドのイングル・ヌーク(Ingle neuk)にあるそうです。イングル・ヌークとは、中世石造住宅の暖炉の側方に設けた「腰かけ」のことです。
現代のヌックは「ちょっとこもれる空間、小ぢんまりしていて居心地がいい空間」として認識されています。欧米では、たとえば以下のようなヌックが間取りの中に取り入れられています。
・ブレックファースト・ヌック:ちょっとした食事をとるための小スペース
・リーディング・ヌック:読書用の小スペース
日本においては、古くは1914年竣工の旧西村家住宅の居間にイングル・ヌークが設けられています。欧米住宅の輸入と共に、100年以上前からひっそりと取り入れられていたのです。
そんなヌックが、コロナ禍以降の家で過ごす時間の増加にともない注目を集めていて、若い方を中心に人気が高まっています。
日本のヌックはLDKの一角や階段下などに設けることが多く、ドア等で区切らずにゆるやかにゾーニングされます。広さは1~3帖くらいで「お部屋未満」のスペースです。
隠れ家のような趣のヌックは、開放とは対極的ですが、独特の居心地のよさがあります。
つづいて、ヌックのメリットとデメリットをご紹介しましょう。
まずは、ヌックの短所をふたつご紹介します。以下の短所をちゃんと把握しておくことで、ヌックをつくったときの満足度が上がります。
・面積が必要
・費用がかかる
ヌックは小さなスペースですが、つくるには場所が必要です。建ぺい率や容積率の制限がある中でヌックではなく収納にしなくていいのか、よく検討する必要があるでしょう。
また、ヌック設置にともない、換気設備・採光窓・照明等の費用がかかるケースもあります。場合によっては、空調設備や造作家具も必要になるでしょう。
このような費用は、収納にしてしまえば不要です。面積と費用の問題は、じゅうぶんご納得のうえ設計を進めてください。
次に、ヌックの主な長所をふたつご紹介します。
・メリハリのある空間がつくれる
・狭い場所ならではの居心地のよさ
ヌックは、空間に目的とメリハリを生み出します。リーディング・ヌックがよい例でしょう。日本ではあまり普及していないので、個性的な印象を与えることもできます。
さらに、ヌックには狭い場所ならではの居心地のよさがあります。外敵から身を隠すために、穴ぐらを根城にしていた動物の本能がそう感じさせるのでしょうか。
きっと、ヌックはあなたの「お気に入りの居場所」になるでしょう。ヌックで過ごすと、安心して、時間がゆるやかに流れているように感じるかもしれませんね。
つづいて、ヌックをつくるとき考慮しておきたいポイントを4つご紹介します。
ヌックに限らず、使いにくいスペースは使わなくなります。せっっかくのヌックが物置のようになって「収納にしておけばよかった」と後悔しないように、過ごし方を想定して設計しましょう。
たとえば、読書のためのリーディング・ヌックにするなら、本棚が必須です。ヌックでうたた寝したいなら、タタミやソファを設置しておくといいでしょう。
ヌックは、ゆるやかにゾーニングするのがポイント。ヌックと隣り合うスペースは、つながりを保ちながらも別空間と分かるようにあつらえましょう。
たとえば、ヌックに建具のない入口を設けたり、段差をつけたりするとはっきり空間の区分けができます。ヌックだけ床材を変えてみるのも、いいでしょう。
おうち時間が増えたことで「広さ」よりも「居心地のよさ」を求めるニーズが高まっています。ヌックも「小ぢんまり、居心地よい空間」を目指しましょう。
とは言え、居心地の感じ方には個人差があります。あなたが理想とするヌックの画像を用意しておき、建築会社スタッフとでき上がりのイメージを共有しておきましょう。
施主と施工会社スタッフの間でイメージに食い違いが生まれると、思っていたのと違うものができ上がってしまいます。それを防ぐには、参考画像が有効です。
家族がみんなで過ごす空間にあって「ちょっとこもって過ごせる、小ぢんまりした場所」として、ヌックが注目されています。お部屋未満の小さな空間ですが、それが居心地のよさにつながっています。
しかし、その小ささ故に、一歩間違うと使いづらい空間にもなり得ます。そうならないように、設計段階から使い勝手や将来性をしっかり検討しておきましょう。
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