更新 間取りのこと
本稿では、ファミリークローゼットがある間取りのアイデアや、収納方法の実例写真をご紹介します。新築住宅の間取りをご検討中の方は、最後までご覧ください。
これまで、クローゼットは各私室に設けるのがスタンダードでした。この常識を疑ってみると、生活動線や家事動線の改善策が見えてきます。
クローゼットを集約して家族で共有することで、あなたの暮らしが快適になるかもしれません。本稿でファミリークローゼットの知識を深めていただき、理想の間取りづくりにお役立てください。
目次 |
---|
それではさっそく、ファミリークローゼットの実例を3例ご紹介しましょう。
まずは、玄関に隣接するファミリークローゼットからご紹介しましょう。玄関のファミリークローゼットは、コートやカバンの他に普段着や制服も収納しておくと、こんなふうに便利です。
・外出時:ファミリークローゼットで着替えられるので、2階へ上がる必要がない
・帰宅時:ファミリークローゼットで部屋着に着替えてLDKへ
1階にあるファミリークローゼットをうまく活用すると、生活のほとんどが1階で完結します。
起床したらファミリークローゼットで着替えて、朝食を食べ、身の回り品を持ったらそのまま出かけられます。帰ってきたときも、ファミリークローゼットで直ぐに着替えられます。
玄関横にファミリークローゼットを設ける間取りは、生活動線が短くなります。LDKに服やカバンが散乱することも、少なくなるでしょう。
洗面脱衣室のとなりにあるファミリークローゼットも、便利です。「帰宅 ⇒ 手洗い ⇒ 着替え」の一連の所作を、一か所でおこなえます。
そこにランドリールーム(または洗面脱衣室兼ランドリールーム)が隣接していると、さらに便利です。洗濯に関する、こんなメリットがあります。
・脱いだものは、そのまま洗濯へ回せる
・洗濯後、その場で干したり乾燥器で乾かしたりできる
・乾かしたものを、私室に運ぶことなく直ぐにしまえる
ランドリールームと乾燥機(または浴室換気乾燥機)は、家事動線を短くしてくれるのでオススメです。「洗濯する・乾かす・たたむ・収納する」が一か所で完結します。
なお、ランドリールームについては以下の記事で詳しく解説しています。ご興味がある方は、あわせてご覧ください。
》ランドリールームとは?便利?なぜ、ランドリールームをつくるのか
ふたつの寝室の間にクローゼットを挟み共有する間取りも、オススメです。たとえば、夫婦が別々に寝室を持つ間取り。間に挟んだファミリークローゼットが、各寝室をゆるやかに繋いでくれます。
親の寝室と子どもの私室の間に、ファミリークローゼットを挟むのもいいでしょう。お互いの部屋が分離されているようで分離されていない、心地よい関係性が築けます。
ファミリークローゼットは、いざというときにお部屋に転用することも可能です。以下のような改修も、比較的カンタンにできます。
・親御様がテレワークになったら「書斎」に
・お子様が増えたら「子ども部屋」に
ファミリークローゼットをお部屋に転用する可能性があるなら、それを見越して窓や照明、コンセントの準備もお忘れなく。
なお、ファミリークローゼットからバルコニーに出られるようにしておくと便利です。バルコニーへ行きたいとき、個人の寝室を通らずに済みます。
さて、ファミリークローゼットについてもう少し知識を深めてみましょう。そもそも、ファミリークローゼットとはどんな部屋なのでしょうか。どれくらいの広さが最適なのでしょうか。
注意点もご紹介しますので、ファミリークローゼットにご興味を持ってくださった方はつづけてご覧ください。
ファミリークローゼットは家族共用のクローゼットで「ファミリークローク」とも呼ばれます。主に、衣類や身の回り品を収納するために設けます。
クローゼットは各私室に分散してつくるのが一般的ですが、ファミリークローゼットはそれを一か所に集約します。よって、こんな方にオススメです。
・2階建てだけど、できるだけ1階だけで生活を完結したい方
・私室の収納は家具を使いたい、家具好きの方
・ひとつのものを家族でシェアするのが好きな、仲良し家族
2階に寝室、1階にLDKがある一般的な間取りでは、1階にファミリークローゼットを設けると生活動線が短くなります。家族が1階にいることが多いご家庭にオススメです。
しっかり大きめのファミリークローゼットがあれば、各寝室のクローゼットをなくすこともできます。寝室用の収納は、家具を使えばOK。家具を愛する北欧のような部屋づくりができます。
ファミリークローゼットは、仲良し家族にもオススメです。家族がクローゼットを共有することで、いっそう絆が深まるのではないでしょうか。
ファミリークローゼットには主にふたつのタイプがありますので、ご紹介しておきましょう。
・部屋タイプ:出入口がひとつ
・ウォークスルータイプ:出入口がふたつ
部屋タイプのファミリークローゼットは、比較的カンタンにお部屋に転用できます。ウォークスルータイプに比べて、同じ面積でも壁量が多くなるので、収納量が増えます。
ウォークスルータイプはふたつの部屋の間に挟まっていて、どちらの部屋からでも出入りできます。冒頭の「間取りのアイデア」でご紹介した3つの事例も、このタイプに該当します。
・玄関 ⇔ ファミリークローゼット ⇔ LDK
・玄関 ⇔ ファミリークローゼット ⇔ 洗面脱衣室
・寝室A ⇔ ファミリークローゼット ⇔ 寝室B
ふたつのタイプは「収納物・使い方・間取り全体」を考慮して、どちらにするか選ぶといいでしょう。
ファミリークローゼットは、どのくらいの広さがあればいいのでしょうか?たとえば家族4人で使うなら、何帖くらいが最適なのでしょうか?
大前提として、クローゼットの最適な容量はご家庭の状況しだいで変わります。服や身の回り品は人によって所有量が違いますので、個々に判断する必要があります。
参考にするなら、現在のお住まいのクローゼットの容量か、国や自治体の住生活基本計画にもとづく「誘導居住面積水準 (都市部)」がよいでしょう。
誘導居住面積水準とは、豊かな住生活の実現のために必要と考えられる面積水準のこと。世帯人数や多様なライフスタイルを考慮して、設定されています。
この「誘導居住面積水準」によると、収納の面積(内法寸法)は1人の場合「2.7㎡」となっています。以降は、1人増えるたびに収納面積も「1.2㎡」ずつ増えています。
・1人 ⇒ 2.7㎡
・2人 ⇒ 3.9㎡
・3人 ⇒ 5.1㎡
・4人 ⇒ 6.3㎡
※ 資料には3人までしか記載がなく、4人の誘導面積水準は推定
この面積を参考に、一般的な設計モジュール(基準寸法=91cm)でファミリークローゼットの大きさを考えてみましょう。
もしも、あなたが4人家族なら、ファミリークローゼットを以下の寸法にすると「誘導居住面積水準」に近くなります。
・1.82m×3.64m(部屋の内法寸法は約1.7m×3.5m) = 4帖
・2.73m×2.73m(部屋の内法寸法は約2.6m×2.6m) = 4.5帖
なお、この「寸法」は部屋の四隅にある柱の芯から芯までの距離です。お部屋の壁面から壁面までの距離(内法寸法)も記載しておきましたので、参考にしてください。
とは言え、間取りは他の部屋との総合的な兼ね合いで決まります。ファミリークローゼットのことだけ考えて面積を決めるのではなく、他のお部屋の面積とバランスを取っていただくとよいでしょう。
ファミリークローゼットには、一長一短があります。利点だけでなく、欠点も把握したうえで採用していただくと、あとで後悔せずに済みます。
最後に、ファミリークローゼットのメリットとデメリットを整理してみましょう。
まずは、デメリットからご紹介します。ファミリークローゼットには、以下の短所があります。
・占有できない
・それなりの広さが必要
・思春期の子どもが嫌がるかもしれない
ファミリークローゼットは共有スペースですから、家族みんなで公平に使わねばなりません。「服が好きだから」と、ひとりで大きなスペースを占拠するとケンカになります。
それなりの広さが要る点も、留意が必要です。増床による建築コスト増を抑えるには「寝室のクローゼットをなくす」等のトレードオフが必要になります。
思春期に差しかかったお子様が、クローゼットの共有を嫌がるケースもあるでしょう。「プライベートな収納が欲しい」と要望が出た場合にどうするか、あらかじめ検討しておくとあとで困りません。
つづいて、メリットをご紹介します。ファミリークローゼットには、以下の長所があります。
・大きなものも収納しやすい
・収納がカンタンになる
・生活動線や家事動線をシンプルにできる
広いファミリークローゼットは大きなものがしまいやすく、納戸のような使い方ができます。たとえばスーツケースやクーラーボックス、クリスマスツリーなどを片づけておけます。
収納をファミリークローゼットにかためると「これは、どこにしまうんだったっけ?」と迷う必要がなくなります。整理整頓が苦手な方でも、カンタンにお片づけできるでしょう。
ファミリークローゼットの配置を工夫すると、生活や家事の動線をシンプルにできます。とくに、1階と2階の往復を減らせる配置にすると、生活や家事が一気にラクになります。
住宅設計では、その部屋で使うものを想定して収納を設けるのが基本です。ですからクローゼットは、私室で着替えることを想定して、各自の部屋に分散して設けるのがスタンダードでした。
しかし、それをあえて一か所にまとめて家族で共有することで、生活や家事がラクになるケースがあります。あなたの新居にも、ファミリークローゼットを取り入れてみてはいかがでしょうか。
弊社では、家づくりのアイデア満載の資料を多数準備しています。広島県で注文住宅をご検討中の方はコチラから無料請求できますので、ご活用ください。
建築事例ではさまざまな収納の事例を掲載しています。ぜひ住まいづくりのご参考にご覧ください。