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3階建て住宅なら、狭い土地でも床面積を確保でき、敷地を有効に使えます。このような特長から、とくに都市部などで強いニーズがあり、制約をはねのけるようなステキな家が数々建てられています。
一方、3階建てには短所もあります。たとえば、2階建てより建築費用が高額だったり、階段の上り下りが大変だったりします。しっかりと長所と短所の両面を把握したうえで、建築すべきでしょう。
本稿では、3階建て住宅の《メリット・デメリット》や、高さ制限等の《3階建て建築時の注意点》をご紹介します。3階建て住宅をご検討中の方は、ぜひ最後までチェックしてください。
なお「3階建てを建てたいけど、木造と鉄骨、どっちがいいの?」と迷っている方は、以下の記事をご覧ください。両方の長所と短所について、詳しく解説しています。
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3階建て住宅は、都市部の狭小地などで土地を有効に活用できる点が魅力です。しかし、その一方で、いくつかのデメリットも存在します。代表的なものをご紹介しましょう。
・建築費用が高額になる傾向がある
・階段の上り下りが大変になる
・風や地震の影響を受けやすい
これらのデメリットをしっかり理解し、適切な対策を講じることが大切です。そうすることで、あとで「こんなはずじゃなかった」と後悔するリスクを減らせます。
それでは、上述のデメリットと、その要因や解決策について掘り下げていきましょう。
3階建て住宅は、2階建て住宅よりも建築費用が高額になる傾向があります。では、どのようなところにコストがかかるのでしょうか?例をあげてみましょう。
・構造計算関連の費用
・人件費や建材費などの原価
・地盤改良費
もう少し、補足説明をしておきましょう。
一般的な3階建て住宅は、建築確認(行政の建築許可審査)を受ける際に構造計算書類の提出が必須になっています。
構造計算とは、建築物の安全性を確認するための計算プロセスのことです。3階建て住宅は、この構造計算により、さまざまな力や荷重に対抗できることを確かめなければなりません。
この構造計算の結果は、建築確認申請時に構造計算書類として提出することが求められます。
参考:建築基準法 第6条1項
このような措置がとられているのは、3階建て住宅が2階建て住宅より風力や地震力の影響を受けやすいからです。よって、構造計算や申請書類作成の費用分だけコストアップします。
3階建て住宅は、2階建て住宅よりも工期が長くなる傾向があります。そのため、人件費が増加し、建築費用が高額になりがちです。
また、3階建て住宅は、2階建て住宅より厳格な耐震性や耐火性が求められます。それに対応するために、建材コストもアップしやすいでしょう。
一方、同規模の2階建て住宅を建てる場合に比べて、必要な土地の面積は少なくて済みます。ですから、土地の取得費用(土地代や仲介手数料など)や固定資産税も安く済みます。
3階建て住宅は、同規模の2階建て住宅よりも重くなる傾向があります。その分、地面にかかる負荷が大きくなり、より強固な地盤が必要になります。
そのため、3階建て住宅は地盤改良工事(地盤を強固にする工事)が必要になるケースが少なくありません。地盤改良工事は、建物の規模や地盤の状態により30~200万円程度かかります。
もしも、これから土地探しをして3階建てを建てるご予定であれば、できるだけ地盤の固い地域を選んでいただくとよいでしょう。
3階建て住宅で避けられないのが、階段の上り下りの増加です。とくに妊娠中や怪我をしているとき、重い荷物を運ぶ際には負担となることが多いでしょう。
年齢を重ねると、体力的な問題から階段の昇降がより辛く感じることもあります。ですから、3階建て住宅は階段の上り下りの負担を軽減するための対策が必要です。
たとえば、1階に洗濯機や物干し場(ランドリールーム等)を設置し、洗濯家事を1階で完結できるようにすることで、階段の使用を最小限に抑えることができます。
また、複数階にトイレを設けることで、トイレのために階段を上り下りする回数を減らせます。こうした動線の工夫により、3階建て住宅の日常生活の利便性が向上するでしょう。
将来的なことを考慮して、ホームエレベーターを設置するのもひとつの選択肢です。
現時点では設置の必要がない場合でも、将来のために電源や設置スペースを確保しておくことで、ライフステージに合わせた柔軟な対応が可能となります。
3階建て住宅は、2階建て住宅よりも風や地震の影響を受けやすくなります。理由は、以下のとおりです。
・重心が高くなるため、風や地震の力による揺れが大きくなりやすい
・縦長の形状になりやすく、横方向の揺れに対して弱くなる傾向がある
・重量があるため、地震時に建物にかかる力が大きくなる
・3階建て住宅は2階建て住宅より高いため、より強い風圧を受ける
近年では、地震や台風などの自然災害による被害が激甚化しています。ですから、今まで以上に頑丈な3階建て住宅が求められています。
とりわけ、吹き抜けやビルトインガレージを設けるときは注意が必要です。耐震や耐風に詳しいハウスメーカーに相談しながら、設計を進めてください。
》耐震等級3なら倒壊しない?これからの耐震ニューノーマルを考えよう
台風や暴風、地震の対策もご紹介しておきましょう。
建材や建物の形状を工夫することで、風の影響を軽減できます。たとえば、耐風性の高い窓や樋、外壁材を使用することで風による損傷を抑制できるでしょう。
できるだけ、間口を広くするのも有効です。建物の高さに対して間口が狭い家は、風で押されたときに働く《倒れようとする力 (転倒モーメント)》に弱くなります。
シンプルな箱形にするのも、効果的です。アシンメトリーの家は、倒れやすい方向と倒れにくい方向ができてしまうため、設計が複雑になります。
木造住宅の《地震対策》は、おもに3つあります。
・耐震等級の高い家にする
・耐震性を高める構造を採用する
・地盤の硬い土地を買う
耐震等級とは、建物が地震に耐えられる強さを示す指標のことです。耐震等級は1から3まであり、1が建築基準法水準、3が耐震等級1の1.5倍の強度です。近年では、等級3を求める方が増えています。
耐力壁(風や地震の力に対抗する役割の壁)をバランスよく配置するのも効果的です。制震構造(建物内に振動軽減装置を設置して、振動を吸収する構造)も採用すると、さらに安心でしょう。
地盤の硬い土地を買うのも有効です。地盤が弱いと地震による揺れが大きくなります。地盤が軟弱な場合は、必要な地盤改良をおこなうことで地震の影響を軽減できます。
参考:Q8 揺れが大きくなるのはどのような場所ですか?(p13)
つづいて、3階建てならではのメリットをご紹介しましょう。
・敷地を有効活用できる
・良好な眺望と採光が期待できる
・水害対策になる
順番に、詳しく解説していきます。
あなたは「都市部は土地が狭いから、家が小さくなってしまうのでは?」「駐車場、つくれない?」と不安になっていないでしょうか?3階建て住宅であれば、その心配を解決できるかもしれません。
3階建て住宅なら、限られた敷地でも、上に空間を伸ばすことで必要な床面積を確保できます。駐車スペースを取りながら、家族全員がゆったりと暮らせる空間をつくり出すことができるでしょう。
工夫次第で、二世帯住宅としての設計も可能です。3フロアある構造を生かし、生活空間をゆるやかに分けられるため、お互いのプライバシーを大切にした住まい方ができます。
3階建て住宅のもうひとつの魅力は、眺望と採光です。
3階なら、部屋の中から目の前に広がる夜景や遠くの山々の景色を楽しめるのではないでしょうか。これは、2階建てにはない特権でしょう。
採光においても、3階が有利です。リビングやダイニングなど、家族が集まる空間を3階に配置すると、日中の明るさや暖かさをたくさん取り込める空間になります。
トップライト(天窓)や吹き抜けを取り入れることで、3階で取り込んだ自然光を2階や1階に下ろすことも可能でしょう。
ただし、良好な眺望や採光が得られるかどうかは、周囲の環境や建物の設計に左右されます。土地を購入する際は、周辺環境をしっかり確認することが重要です。
近年、台風や集中豪雨による水害が激甚化しています。背の高い「3階建て住宅」なら、水害対策としても有効な選択肢となり得るでしょう。
近年では、ハザードマップで「安全」とされている地域でも油断できません。2階や3階をおもな生活空間にすることで、浸水で生活がまひするリスクを抑えられます。
あわせて、住宅のレジリエンス(回復力)を高めておくことも重要です。レジリエンス住宅なら、被災した際も衛生的で自立した生活を送れる可能性が高まります。
》レジリエンス住宅とは?- 住宅に災害から生活を守る防災性能を
3階建て住宅は、2階建て住宅に比べて厳しい規制が設けられています。3階建て住宅の新築をご検討中でしたら、建築する地域の規制をしっかりと把握してから計画を進めてください。
とくに、これから土地探しをされる場合は、規制を把握する重要度が増します。土地を購入したあとで理想の3階建てが建たないことに気づくと、取り返しが付きません。
3階建てに影響する重要な規制を3つご紹介します。
・高さ制限
・建ぺい率・容積率
・防火規制
それぞれ、詳しく解説しましょう。
3階建てを建てる際は、高さの規制を確認しておくべきです。建物の高さは、都市計画法や各自治体の条例によって制限されています。
地域(都市計画法で定められた用途地域)によっては、良好な住居環境を保護するため、建築可能な建物の《絶対高さ》が制限されています。
たとえば「第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用、田園住居地域」に指定されている地域では、10mまたは12mの高さ制限が設けてあります。
しかし、一般的な3階建ては高さが12mを超えるため、そのような地域での建築は難しいでしょう。
参考:建築基準法 第55条 (第一種低層住居専用地域等内における建築物の高さの限度)
上述の絶対高さの制限以外にも、道路や隣地、あるいは北側の土地の日照や通風に配慮するため、以下のような高さ制限が設けられています。
・道路斜線制限
・隣地斜線制限
・北側斜線制限
道路斜線制限は、道路の日照や通風を遮らないために設けられている規制です。建物の道路に面する側は、この規制によって高さが制限されます。
隣地斜線制限は、隣接した土地の日照や通風を確保するために設けられている規制です。建物の隣地に面する側は、この規制によって高さが制限されます。ただし、20mを超えるような建物が対象です。
北側斜線制限は、北隣の土地の採光を阻害しないために設けられた規制です。良好な住居環境を保護する必要がある地域では、この規制によって北側の高さが制限されます。
3階建て住宅を建てる際には、建ぺい率と容積率も確認しておくとよいでしょう。
建ぺい率と容積率は、建築可能な建物の規模(床面積)を制限する規定です。この制限を超える規模の住宅は、原則的に建築できません。
建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積(≒1階の床面積)の割合です。たとえば、敷地面積が100m²で建ぺい率が60%の場合、建築面積の最大は60m²になります。
容積率は、敷地面積に対する延床面積(≒すべての階の床面積の合計)の割合です。たとえば、敷地面積が100m²で容積率が200%の場合、延床面積の最大は200m²になります。
建ぺい率や容積率が低めに設定されている地域では、3階建て住宅の建築は難しいでしょう。ですから、建築地の建ぺい率と容積率は、必ずチェックしてください。
高さ制限や建ぺい率・容積率を確認したい方は、自治体のホームページ等で都市計画図をチェックしていただくか、不動産会社やハウスメーカーの担当者にお尋ねください。
3階建てを建てる際は、建築地の防火規制も確認しておきましょう。とくに、市街地や駅周辺、大きな幹線道路沿いなどは規制されているケースが多いでしょう。
これらの地域は火災の影響が大きく、特別に「防火地域」あるいは「準防火地域」に指定されています。防火地域・準防火地域では、建物の構造や使用する建材に耐火性が求められます。
参考:都市計画法 第9条21項
よって、防火地域・準防火地域で3階建てを建てる際は「耐火建築物」にしなくてはなりません。耐火建築物は使用できる建材が制限されますので、間取りやデザインに影響が出る可能性があります。
ですから、防火地域・準防火地域での3階建ての建築には、特別な知識が必要です。木造3階建てを建てたい場合は、耐火建築物に詳しいハウスメーカーにご相談ください。
3階建て住宅は、土地を有効活用できたり良好な眺望と採光を確保できたりするなど、多くのメリットがあります。その一方で、注意すべき点もいくつかあります。
とくに、コストアップや階段の上り下り、法令による規制は考慮が必要でしょう。しっかり注意点を把握して対策を打つことで、長く満足して住み続けられる3階建て住宅になりますよ。
創建ホームは、広島県で7,000棟を超える注文住宅の実績があり、木造建築に精通しています。耐火地域における3階建て住宅も数多く手がけていますので、お気軽にご相談ください。