更新 間取りのこと
本稿では、吹き抜けのメリットとデメリットをご紹介します。デメリットの対策方法もご説明しますので、注文住宅の間取りをご検討中の方は最後までご覧ください。
玄関やリビングにおしゃれな吹き抜けを設けると、インパクトのある空間にできます。素敵な空間のある家は、日々の暮らしや人を招くことが楽しくなります。
しかし、吹き抜けは楽しいことばかりではありません。吹き抜けのメリットとデメリットは表裏一体であり、長所の裏側には短所もあるのです。
憧れだけで吹き抜けをつくると、後悔することになりかねません。短所も理解したうえでシッカリ対策して、満足のいく家づくりをしましょう。
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明るくて開放的な「吹き抜け」は、素敵です。暗くなりがちな都市部の住宅密集地等で、採光問題の解決に役立つケースもあります。
しかし、吹き抜けが持つ特徴は、良いものばかりではありません。ちゃんと良し悪しを把握して、可能な限り短所を解消できるように設計することが大切です。
さっそく、吹き抜けの短所を4つご紹介します。対策もご紹介しますので、新築の間取りをご検討中で「吹き抜けをつくりたい」とお考えの方は参考にしてください。
吹き抜けの短所と言えば、真っ先に思いつくのが室温の問題でしょう。「吹き抜けは夏暑く、冬寒い?冷暖房もききにくいのでは?」と、心配される方が少なくありません。
吹き抜けは、勾配天井にして高い位置に窓をつけるケースがよくあります。たしかに、そのような空間は以下の現象が起こりやすくなります。
・高所の窓から日光が差し込み、暑くなりやすい
・太陽に温められた屋根の熱が伝わって、暑くなりやすい
・上から冷たい空気が降りてきて、床付近は寒くなりやすい
吹き抜けのある部屋が上述のような現象を起こすと「夏暑く、冬寒い」状態になります。空間の上下で温度ムラができて、エアコンが電力を浪費する原因にもなります。
このようなデメリットを改善するには、以下の対策が有効です。
・断熱性を高める
・日射をコントロールする
・シーリングファンを設置する
じつは、日本の住宅の断熱性能は「先進国の中で最低レベル」と言われています。ですから、日本で吹き抜けを嫌がる人がいるのは、その意味では当然なのです。
断熱性を上げれば、吹き抜けの「夏暑く、冬寒い」状態はかなり改善できます。家の壁や屋根、床下に性能が高い断熱材を入れ、Low-E複層ガラスの断熱サッシを使っていただくとよいでしょう。
日本の住宅の断熱性能にご興味がある方は、こちらもあわせてご覧ください。
ところで、南面にある約3㎡の窓から入る日射熱が、小型電気ストーブの発熱量ぐらいになるのをご存知でしょうか。だったら、夏は日射を遮り、冬は日射を取込みたいですよね。
それをコントロールできるのが、出幅が長い庇(ひさし)や外付ブラインドです。建物形状や窓の位置、敷地内の建物配置も日射の取得に大きく関わります。
シーリングファンも、吹き抜けの空気をかき混ぜてくれるので、温度ムラの改善に効果的です。吹き抜けの温度対策は「断熱・日射コントロール・シーリングファン」がおすすめです。
吹き抜けには上下階を遮る天井(床)がないので、1階の音は2階へ、2階の音は1階へ伝わりやすくなります。レンジフードで排出できなかったニオイやケムリも、室内に広がっていきます。
音やニオイの感受性は、人によってずいぶん違います。ですから「音やニオイは、絶対に許容できない」と思われるなら、吹き抜けは避けたほうが無難です。
「我慢できるが、できるだけ広がらないようにしたい」とお考えの方には、以下の対策がおすすめです。
・寝室を吹き抜けから離す
・寝室の防音性能を高める
・キッチンの間取りを半個室にする
・換気扇や換気窓をつける
あまり音やニオイに敏感でない方でも、寝ているときに感じると気になるでしょう。ですから、寝室はできるだけ吹き抜けから離し、必要に応じて防音ドアの採用をご検討ください。
キッチンを個室ないしは半個室にしていただくと、料理のニオイや食器洗いの音の広がりを抑えられます。24時間計画換気をおこなうことは大前提として、吹き抜けに換気扇や換気窓を設置するのもよいでしょう。
吹き抜けの天井に照明器具を設置すると、電球が切れたときの交換が大変です。ハシゴをかけて交換できるのは、若いうちだけでしょう。
高所に設置した窓の掃除も、同じです。自分でできないなら、業者を呼ばなければなりません。しかし、それではお金がかかるし、自分ですぐにできないのは不便ですよね。
照明に関してはいくつか対策がありますので、ご紹介しておきましょう。
・寿命が長いLED照明を使い、交換回数を減らす
・電動で昇降できるタイプの照明器具を選ぶ
・ブラケット照明等の脚立でとどく照明にする
高所の照明は、寿命が長いLED照明を採用して、交換回数を減らすのが基本です。LED照明は調光や調色ができるものもあり、機能的にも優れています。
電動昇降タイプのシーリング照明やペンダント照明なら、電球交換が安全にできます。脚立でとどく高さの壁に、ブラケット照明や首が振れるタイプの壁付スポットライトを設置するのもよいでしょう。
参考:Panasonic 美ルック ブラケット [HomeArchi]
高所にある窓は、柄の長い用具を使うと下から掃除できます。柄の先をモップやワイパー、スクイージーに取り替えられるものがおすすめです。
床は、耐震上とても重要な役割を担っています。吹き抜けは床がないので、耐震面では不利に働きます。
もう少し専門的な言い方をすると、地震に対抗する壁(耐力壁)は、水平構面がシッカリしていないと力を発揮できないのです。しかし吹き抜けがあると、水平構面の強度が小さくなります。
ですから、吹き抜けを設ける場合は、位置や面積をよく検討する必要があります。必要に応じて、簡易な壁量計算ではなく緻密な構造計算によって耐震性を評価していただくとよいでしょう。
つづいて、吹き抜けがある家の長所を4つご紹介します。
吹き抜けがある空間の長所と言えば、まずなんと言っても「開放感」でしょう。天井が高く容積が大きい空間は、ダイナミックで気持ちよく過ごせます。
空間デザイン面では、リビング階段との相性も抜群です。おしゃれでインパクトがあるリビングになるので、きっと人に見せたくなります。
吹き抜けの高所の窓は、低い位置の窓に比べて室内を明るくできます。たとえば建築基準法では、トップライト(天窓)は一般的な高さにある側窓の3倍の採光効果があるとみなされます。
この性質を利用して、採光しづらい都市部の住宅密集地等で吹き抜けを活用するケースがあります。
なお、高所に開閉できる窓があると、温度差を利用した換気(下から上へ抜けていく)ができます。この換気方法を「重力換気」または「温度差換気」と言います。
高所用の横すべり出し窓は、1階からチェーンや電動で開閉できるものがあります。トップライト(天窓)より雨仕舞いがよい(雨漏りしにくい)ので、おすすめです。
参考:高所用横すべり出し窓 チェーンタイプ
参考:高所用横すべり出し窓 電動タイプ
吹き抜けの多くは、リビングに設けられています。リビングは南側にある間取りが多いので、そこに吹き抜けがあると「陽当たりがよい部屋を1室失っている」とも考えられます。
ですから「部屋にするべきか、吹き抜けにするべきか……」と悩む方が少なくありません。そんなときは、あとで部屋にできる吹き抜けがおすすめです。
吹き抜け部分にあとから床が張れるように、構造や配線等の計画をしておきましょう。そうすれば、書斎や子ども部屋が必要になったときに、吹き抜けをお部屋に転用できます。
ただし、増床は建築確認が必要になるケースもあります。詳しい建築会社と一緒に、設計を進めてください。
2階建て以上の家は、下階と上階が空間的に分断されてしまいます。家族の気配やコミュニケーションも断ち切られるため、これを嫌って平屋にする方がいるくらいです。
吹き抜けがあれば、1階と2階の分断をある程度解消できます。家族の気配を感じ取りやすくなるので、家族のつながりを大切にする方にはうってつけです。
吹き抜けについて、もう少し詳しくご紹介しましょう。そもそも、吹き抜けとはどういう構造なのでしょうか。
建物の内部で、天井をなくして上下階をひと続きにした空間を「吹き抜け」と呼びます。ですから、平屋には吹き抜けがつくれません (勾配天井にすると、吹き抜けと似た雰囲気にできる)。
吹き抜けはリビングや玄関に設けるケースが多く、採光したり開放感を出したりするのに役立ちます。
吹き抜けに適した間取りの例を、2つご紹介します。
リビングに階段を設け、さらに吹き抜けにする間取りが人気です。天井が高くなるので、広く感じて居心地よく過ごせます。
リビング階段にすると、廊下や階段ホールをなくせます。床面積を節約してコストダウンを図ったり、他の居室に面積を回したりできるので、おすすめの間取りです。
家族のコミュニケーションも、生まれやすくなるでしょう。リビングの吹き抜けと階段が、分断されがちな1階と2階をつないでくれます。
北米の住宅に多いのが「玄関+吹き抜け」です。回り階段のある玄関ホールがグレートルーム(LDK)とひと続きになっている家を、海外ドラマで見た方もおられるでしょう。
京町家にも、玄関から入るとすぐに吹き抜けの「通り庭」と呼ばれる通路があります。現代風にリノベーションした京町家では、これを見所のひとつにしているケースがあります。
これから新築する住宅の玄関に吹き抜けを設けると、京町家や輸入住宅のような驚きのある玄関ホールになるでしょう。
さて、新築時に吹き抜けをつくるとコストアップになるのでしょうか。それとも、コストダウンできるのでしょうか。天井がなくなるので、コストダウンできそうに感じますよね。
吹き抜けは工事する際に足場を組む必要があり、その費用がかかります。住み始めてからも、クロス(壁紙)の貼り替えや照明器具を交換する際に足場が必要になるケースがあります。
たしかに材料費は減りますが、吹き抜けの面積や形状によっては必ずしもコストダウンできません。費用が気になる方は、建築会社とよく相談して設計をおこなってください。
吹き抜けの長所と短所は、表裏一体です。たとえば、天井が高い吹き抜けは解放感がある反面、冷暖房効率が悪くなります。吹き抜けをつくりたい方は、このような両面を理解しておくとよいでしょう。
吹き抜けは「つくる理由」も重要です。住宅密集地で採光が困難な場合は、吹き抜けと高所窓を設けると満足度が高まるでしょう。一方、なんとなくつくると、短所ばかりが気になるかもしれません。
吹き抜けのある家の新築をご検討中の方は、実績が豊富な建築会社とよく相談しながら、家づくりを進めてください。きっと、短所をフォローしながら、長所を伸ばす設計をしてくれますよ。
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建築事例ではさまざまな吹き抜けの事例を掲載しています。ぜひ住まいづくりのご参考にご覧ください。